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第12章 5年後の会社は、正直よくわからない

5年後、 AIはどこまで進んでいるのでしょうか。

会社は、 今と同じ形をしているのでしょうか。

AI社員。 AI経営者。 1人企業。 週休3日。 仕事の自動化。 格差。 雇用。

いろいろな未来が語られています。

でも、 正直に言えば、

よくわかりません。

生成AIは、 ここ数年だけでもかなり変わりました。

だから、 5年後を断定的に予測するのは危険です。

この章では、

「5年後はこうなる」

と言い切るのではなく、

「こういう可能性はある」

という材料を並べてみます。

未来を当てるためではありません。

考えるためです。


1 5年後を当てるのは、たぶん無理です

AIの未来予測は、 とても魅力的です。

人間の仕事がなくなる。 AI社員が普通になる。 会社が一人で動く。 経営者もAIになる。

どれも、 ありそうに聞こえます。

でも、 技術の進歩は一直線ではありません。

性能が急に伸びることもある。 規制が入ることもある。 コストが下がることもある。 逆に、安全性の問題で止まることもある。

だから、

未来を一つに決め打ちする

必要はありません。

むしろ、

複数の可能性を持っておく

ほうが現実的です。


2 AI社員はどこまで普通になるのか

今でもAIは、

メールを書く。 資料を作る。 調べる。 要約する。 問い合わせに答える。

といった仕事を手伝えます。

これがさらに進むと、

「AIを使う社員」

ではなく、

「AIそのものが担当者」

のように見える場面が増えるかもしれません。

例えば、

営業担当AI。 総務担当AI。 調査担当AI。 顧客対応AI。

それぞれが役割を持つ。

人間が、

「この仕事をお願いします」

とAIに渡す。

見た目はかなり社員に近いです。


3 でも、AI社員は人間社員と同じではない

AIが仕事をしても、

人間の社員と同じではありません。

給料。 労働時間。 感情。 成長。 責任。 人間関係。

こうしたものが違います。

だから、

「AI社員が100人います」

と言っても、 人間100人の組織とは全く違います。

むしろ、

ソフトウェアと人間の中間

のような存在になるのかもしれません。

まだ言葉が追いついていません。


4 AI経営者はあり得るのか

ここは、 かなり怪しい話です。

AIが、

売上を見る。 コストを見る。 市場を調べる。 投資案を比較する。 人員計画を作る。 リスクを整理する。

ここまでは、 かなりできるようになるかもしれません。

すると、

「経営者もAIでいいのでは」

という話が出てきます。

一見、 ありそうです。

でも、 ここには大きな問題があります。


5 AIは経営判断を補助できても、意思決定主体にはなりにくい

経営判断には、

最適化

だけでは済まない問題があります。

利益を取るか。 雇用を守るか。

成長を優先するか。 安全を優先するか。

今の顧客を守るか。 新市場に賭けるか。

これは、

価値判断

です。

AIは、 選択肢を出せます。

メリットとデメリットも整理できます。

でも、

最後に何を選ぶか

は別の問題です。


6 AIを100体集めて多数決すればよいのか

では、

AIを一体に決めさせるのが危ないなら、 100体に聞いて多数決すればよいのでは。

一瞬、 良さそうに見えます。

でも、 人間の経営者を100人集めた会社を想像してください。

たぶん、 船が山に登ります。

人数を増やせば、 意思決定が正しくなるわけではありません。

AIでも同じです。


7 多数決は、正しさを保証しない

複数のAIが、

撤退すべき。 投資を続けるべき。 値上げすべき。 雇用を守るべき。

と意見を出す。

多数決を取る。

でも、

多数派の意見 = 正しい判断

ではありません。

しかも、 AI同士が本当に独立しているとは限りません。

似たデータ。 似たモデル。 似た価値観。

を持っているかもしれない。

AIを100体集めても、

100人分の独立した知性

とは限らないのです。


8 AI経営者より、AI参謀のほうが現実的

そう考えると、

AI経営者

より、

AI参謀

のほうが現実的です。

AIが、

情報を集める。 反対意見を出す。 リスクを整理する。 シナリオを比較する。

そこまでやる。

最後に、

人間が決める。

これなら、 かなり強い。

AIは100人分の参謀になれる。

でも、

船頭は人間が一人いる。

そんな形のほうが自然かもしれません。


9 1人企業は増えるのか

第10章で、

1人+AI+外部専門家

という会社の話をしました。

これは、 5年後にはかなり増えている可能性があります。

営業。 調査。 資料作成。 顧客対応。 経理補助。

をAIが手伝う。

必要なところだけ、 人間の専門家を使う。

すると、

人を大量に雇わなくても、 かなり大きな事業

を運営できる。

これは十分あり得ます。


10 でも、すべての会社が1人にはならない

一方で、

製造。 建設。 物流。 介護。 飲食。 観光。

のように、 物理的な仕事が多い業種があります。

こうした仕事では、 人間が必要です。

だから、

AIで全部一人会社になる

とは思いません。

業種によって、 変化の速度はかなり違うはずです。


11 雇用は減るのか

これは、 たぶん一番よく聞かれる問いです。

AIで仕事が減るなら、

雇用も減るのでは。

たしかに、

定型事務。 単純な情報整理。 初歩的な文章作成。

などは減る可能性があります。

でも、

新しい仕事

も増えるかもしれません。

歴史的にも、 技術は仕事を消しながら、 別の仕事を作ってきました。

ただし、

今回も同じになる

とは言い切れません。

AIは、 変化の速度がかなり速いからです。


12 新人の入口はなくなるのか

AIが初級作業を代替すると、

新人が最初にやる仕事が減る

という問題があります。

昔なら、

議事録。 調査。 簡単な資料。 初歩的なコード。

をやりながら仕事を覚えた。

AIが全部やる。

すると、

経験を積む入口

がなくなるように見えます。

でも、 それだけではないと思います。


13 AIを先生にできる新人は、むしろ猛烈に伸びる

AIは、

何度でも質問できます。

わからないところを聞ける。

例を出してもらえる。

添削してもらえる。

練習問題も作ってもらえる。

つまり、

AIを先生として使える新人

は、 昔より速く成長する可能性があります。

先輩が忙しくても、 AIには聞ける。

深夜でも聞ける。

何度聞いても怒られない。

これはかなり強いです。


14 AIは新人の格差を縮めるのではなく、広げるかもしれない

ここが、 少し怖いところです。

AIに質問し、 理解し、 試し、 修正する人。

こういう人は、 どんどん伸びる。

一方で、

AIの答えをコピーするだけ。

なぜそうなるのか考えない。

間違いを疑わない。

という人は、 あまり伸びない。

つまり、

AIによって新人の能力差が縮まる

のではなく、

学習能力の差が増幅される

可能性があります。


15 会社は若返るのか、高齢化するのか

ここは、 少し煽ってみます。

AI時代の会社は、 若返るのでしょうか。

それとも、 高齢化するのでしょうか。

ベテランは強いです。

経験がある。

AIの間違いも見抜ける。

何を聞けばよいかもわかる。

だから、

ベテラン+AI

は非常に強い。

一方で、 若手も強くなります。

AIに教えてもらいながら学べる人は、

昔より圧倒的に速く成長できる。

では、 どちらが有利なのでしょうか。


16 たぶん、年齢は本質ではない

結局、

年齢ではない

のかもしれません。

強くなるのは、

AIを使える人。

AIの答えを評価できる人。

AIから学べる人。

AIを使って自分自身を更新できる人。

25歳でも、 AIの答えを貼り付けるだけなら伸びない。

55歳でも、 AIに質問し続ける人なら伸びる。

AI時代に差がつくのは、

若さでも経験年数でもない。

AIを使って、 自分自身を更新できるかどうか。

なのかもしれません。


17 AIで私たちは暇になるのか

AIで1時間かかっていた仕事が、 10分になった。

50分余ります。

では、 その50分をどうするのでしょうか。

休む。

勉強する。

新しい仕事をする。

あるいは、

さらに5件仕事を入れる。

どれもあり得ます。

AIは時間を生み出せます。

でも、

余暇を生み出すとは限りません。


18 週休3日になる未来も、仕事が6倍になる未来もある

AIで生産性が上がれば、

同じ生産量で、 労働時間を減らす

ことはできます。

週休3日。

1日6時間勤務。

そういう会社も出るかもしれません。

でも、

「空いた時間でもっと売ろう」

と考える会社もあります。

すると、 仕事の密度は上がります。

どちらになるかは、

AIが決めることではありません。

会社と社会が決めます。


19 格差は縮まるのか、広がるのか

AIは、 格差を縮める力も持っています。

高価な専門家に頼めなかった小企業でも、 AIを使える。

英語が苦手でも、 海外とやり取りできる。

プログラマーがいなくても、 簡単な自動化ができる。

これは、 小さい会社や個人にとって大きいです。


20 でも、AIを使える人はさらに強くなる

一方で、

資本。 データ。 専門知識。 AI活用能力。

を持っている人は、 さらに強くなる可能性があります。

AIで、

資産がある人は、 さらに効率よく投資できる。

専門家は、 さらに大量の仕事をこなせる。

大企業は、 大量のデータをAIで使える。

すると、

AIは格差を縮める

と同時に、

格差を広げる

こともあり得ます。


21 大企業は不利になるのか

少人数企業が強くなると、

大企業は不利になる

ように見えます。

でも、 大企業には、

ブランド。 資金。 顧客基盤。 データ。 販売網。 信用。 規制対応力。

があります。

これは大きい。

だから、

小さい会社が全部勝つ

とは思いません。


22 一番強いのは「大企業なのに速い会社」かもしれない

大企業の資源を持ちながら、

小企業のように速く動く。

もしAIでそれができるなら、

かなり強いです。

大企業の弱点は、

規模そのもの

ではなく、

意思決定や調整の遅さ

かもしれません。

AIがそこを減らせるなら、 大企業側にも大きな利点があります。


23 会社員という働き方は残るのか

AIを使えば、

個人でも仕事ができる。

1人会社。 フリーランス。 複業。

は増えるかもしれません。

一方で、

会社員には、

安定収入。 社会保障。 仲間。 教育。 信用。

があります。

だから、

会社員がなくなる

とは思いません。

ただ、

会社員でなければできなかった仕事

は減るかもしれません。


24 AIにできないことは何か

ここから、 この章のかなり大事な問いです。

AIが、

作る。 調べる。 説明する。 比較する。 予測する。 実行する。

ところまでできるようになったら、

人間には何が残るのでしょうか。


25 AIは「どうやるか」に強い

AIは、

こうしたい

という目的を与えると、 かなり強いです。

方法を考える。

候補を出す。

手順を作る。

実行を手伝う。

つまり、

「どうやるか」

には強い。

でも、

「何をやりたいか」

は少し違います。


26 AIにできない最後の仕事は、「何をしたいか決めること」かもしれない

これは、 かなり大きな話です。

会社として、

何を作りたいのか。

誰を助けたいのか。

どんな顧客と付き合いたいのか。

何を大切にしたいのか。

どこまで利益を求めるのか。

何を守りたいのか。

こうしたことは、

単なる最適化

ではありません。

価値観です。


27 AIは目的を提案できても、目的の主体にはなれない

AIに、

「この会社は何を目指すべきですか」

と聞けば、 答えは出ます。

でも、

その答えを本当に望んでいるのは誰でしょうか。

AIでしょうか。

違います。

最終的に、

「私はこれをやりたい」

「この会社はこれを大切にしたい」

と思う主体が必要です。

少なくとも今のところ、 それは人間です。


28 責任も、人間側に残る

AIが、

この商品を出すべき。

この人を採用すべき。

この市場から撤退すべき。

と提案する。

それを採用して失敗した。

AIは責任を取りません。

決めた人間。

会社。

経営者。

が責任を持ちます。

だから、

意思決定の最後の部分

は、 簡単にはAIに移せません。


29 人間の価値は「判断すること」に寄っていくのかもしれない

AIが、

資料を作る。 情報を集める。 案を出す。

なら、

人間は、

何を選ぶか。

何を信じるか。

何を大切にするか。

を決める。

そういう役割に寄っていく可能性があります。

AIが強くなるほど、

人間の価値判断

がむしろ重要になる。

少し逆説的です。


30 仕事という概念も変わるかもしれない

今は、

会社に時間を提供する。 給与をもらう。

という働き方が中心です。

でも、

AIで一人が大きな価値を作れるようになると、

時間

より、

成果。 知財。 事業。 所有権。

の比重が上がるかもしれません。

これは、 雇用の形そのものを変える可能性があります。


31 AIが会社を運営し、人間はオーナーになるのか

かなり怪しい未来です。

人間が、

この事業をやりたい。

この利益率を目指したい。

このルールは守りたい。

と目的を設定する。

日々の、

営業。 調整。 発注。 資料。 顧客対応。

はAIが回す。

人間は、 オーナーとして方向だけ決める。

そんな会社も、 技術的には想像できます。


32 でも、AIが目的まで決めたら何のための会社なのか

さらに進めて、

AIが、

何を売るか。

誰に売るか。

利益をどう使うか。

会社の目的そのものまで決める。

すると、

その会社は誰のために存在しているのでしょうか。

かなり哲学的です。

でも、 AI経営者の話を突き詰めると、 ここに来ます。


33 5年後の会社には、少なくとも三つの未来がある

ここまでの話を、 かなり単純化してみます。

一つ目は、

「AI補助社会」。

今と似た会社で、 社員がAIを使う。

これはかなりありそうです。

二つ目は、

「少人数企業社会」。

AIエージェントを多く使い、 少ない人間で大きな仕事をする。

これも十分あり得ます。

三つ目は、

「AI自律運営社会」。

AIがかなりの業務を自分で進める。

人間は、 目的と最終判断を持つ。

これも、 一部では始まるかもしれません。


34 たぶん、全部混ざる

実際には、

どれか一つ

にはならないと思います。

大企業ではAI補助。

新しいスタートアップでは少人数企業。

一部のデジタル事業ではAI自律運営。

業種によって、 会社によって、 混ざる。

そんな未来のほうが自然です。


35 経営者は未来を当てなくていい

ここまで、 未来の話をたくさんしました。

でも、

経営者が5年後を正確に当てる

必要はありません。

そんなことは、 たぶん誰にもできません。

大事なのは、

変化したときに動けること

です。


36 今できることは、意外に普通です

未来はわからない。

でも、 今できることはあります。

AIを小さく使う。

社内データを整理する。

社員がAIから学べるようにする。

AIに任せる仕事を考える。

人間に残す仕事を考える。

会社が何を大切にするかを考える。

特別なことではありません。

でも、 たぶんこれが重要です。


37 AIの未来より、会社の目的を考える

AIがどれだけ賢くなるか。

これは、 私たちには決められません。

でも、

そのAIを何に使うのか。

これは決められます。

第11章では、

AIを使って、 マネーを増やすのではなく、 富を生む

という話をしました。

同じように、

AIを使って、

どんな会社を作りたいのか。

どんな仕事を残したいのか。

誰に価値を届けたいのか。

これは、 会社側が決めることです。


まとめ 未来はわからない。でも、目的は決められる

AI社員が普通になるのか。

AI経営者が出るのか。

1人会社が増えるのか。

週休3日になるのか。

格差が広がるのか。

雇用が減るのか。

正直、 まだわかりません。

たぶん、 全部少しずつ起きるのだと思います。

そして、 予想外のことも起きるでしょう。

だから、

AIの未来を当てる

ことに、 あまり力を使いすぎなくてもよいと思います。

それより、

AIが進んでも、 価値を作れる会社にしておく。

AIが強くなっても、 何を大切にするかを決められる会社にしておく。

こちらのほうが大事です。

5年後にAIがどうなっているか、 会社というものがどうなっているのか、 それは正直わかりません。

でも、 何を大切にする会社にしたいかは、 今決められます。