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第10章 AIが進んだら、会社そのものは必要なのか

ここからは、少し怪しい話になります。

前の章までは、

AIで何ができるか。 会社でどう使うか。 仕事はどう変わるか。 管理職はどう変わるか。

といった、比較的現実的な話をしてきました。

しかし、AIがさらに進んだら、 もっと大きなことが起きるかもしれません。

例えば、

調査。 資料作成。 営業。 顧客対応。 翻訳。 会計補助。 契約書の下書き。 進捗管理。 広報。

こうした仕事のかなりの部分を、 AIエージェントが担当するようになったらどうなるのでしょうか。

会社は、 今と同じ人数を必要とするのでしょうか。

もしかすると、

1人の会社が、 今の100人会社に近い仕事をする

ようになるかもしれません。

かなり乱暴な話です。

でも、 完全な空想とも言い切れません。

この章では、

そもそも会社とは何のためにあるのか

というところから、 少し考えてみます。


1 そもそも、なぜ会社があるのか

普段、 会社が存在することを不思議には思いません。

人を雇う。 部署を作る。 上司がいる。 会議をする。 仕事を分担する。

普通です。

でも、考えてみると、

なぜ一人ひとりが全部個人事業主で、 必要なときだけ契約して働かないのでしょうか。

会社には、

人を集める。 仕事を分担する。 情報を共有する。 長期的に協力する。 契約をまとめる。 信用を持つ。 責任を負う。

という役割があります。

つまり会社は、

人と情報と契約をまとめる仕組み

でもあります。

AIが進むと、 この一部を機械が担えるようになります。

そこから話が少し面白くなります。


2 会社の仕事は、かなり「調整」でできている

会社の仕事というと、

製品を作る。 サービスを提供する。 営業する。

と考えます。

でも実際には、

調整

にかなり時間を使っています。

会議日程を決める。 担当者を決める。 資料をそろえる。 進捗を確認する。 説明する。 承認を取る。 記録を残す。

こうした仕事です。

AIエージェントが、

情報を集める。 予定を調整する。 必要な人に連絡する。 進捗を確認する。 資料をまとめる。

ところまでできるようになると、

会社の内部調整コスト

はかなり下がるかもしれません。


3 AIエージェントとは何か

ここで、 少し未来っぽい言葉を出します。

AIエージェントです。

単に質問に答えるAIではなく、

目的を与えると、 必要な作業をいくつか進めるAI

くらいに考えてください。

例えば、

「来月の展示会に出展する準備をして」

と指示する。

すると、

過去資料を探す。 必要なタスクを分ける。 日程を作る。 資料案を作る。 メール案を作る。 不足情報を聞く。

といったことを進める。

これがさらに進むと、

別のシステムを操作する。 メールを送る。 予約する。 発注する。

ところまで行く可能性があります。

この段階になると、

AIは単なる道具

というより、

小さな担当者

のように見えてきます。


4 AIエージェントは社員なのか

ここで、 少し変な疑問が出ます。

AIエージェントは、 社員なのでしょうか。

もちろん今の法律では、 人間の社員ではありません。

でも、

仕事を割り当てる。 期限を設定する。 成果物を出す。 修正を指示する。

という使い方をすると、

見た目はかなり社員に近くなります。

あるいは、

外注先

に近いかもしれません。

あるいは、

高性能なソフトウェア

にすぎないのかもしれません。

このあたりは、 まだ言葉が追いついていません。


5 人を雇うか、外注するか、AIに任せるか

これまで会社は、

自社で人を雇う

か、

外注する

か、

という選択をしてきました。

これからは、

人を雇う。 外注する。 AIに任せる。

という三択になるかもしれません。

例えば、

翻訳。 デザイン案。 市場調査。 簡単なプログラム。 文章作成。

こうした仕事では、 すでにこの三択が始まっています。

これがもっと広がれば、 会社の人員構成はかなり変わります。


6 1人会社はどこまで大きくなれるか

ここが、 この章の一番面白いところです。

一人の経営者が、

AIを使って営業。 AIを使って調査。 AIを使って資料作成。 AIを使って顧客対応。 AIを使って経理補助。 AIを使って広報。

までやる。

さらに、

専門的なところだけ外部の人に頼む。

この形なら、

一人でかなり大きな事業

を動かせる可能性があります。

今まで10人必要だった会社が、 2人で動く。

今まで100人必要だった仕事を、 10人で動かす。

あるいはもっと極端に、

1人で100人会社並みの売上

を作る。

そんな会社が出ても不思議ではありません。


7 売上と社員数の関係が壊れるかもしれない

これまで、

売上が大きい会社 = 社員が多い会社

という感覚がありました。

もちろん例外はあります。

でも、 だいたいはそうです。

AIが大量の知的作業を代替すると、

売上100億円。 社員10人。

のような会社が、 もっと増えるかもしれません。

そうなると、

社員数で会社の規模を見る

こと自体が、 あまり意味を持たなくなる可能性があります。


8 会社の規模を何で測るのか

もし社員数が意味を失うなら、 何で会社の規模を見るのでしょうか。

売上。 利益。 顧客数。 処理件数。 保有データ。 AIエージェント数。

いろいろ考えられます。

例えば、

社員3人。 AIエージェント50体。 顧客1万人。

という会社。

これは小企業なのでしょうか。

それとも、 かなり大きな企業なのでしょうか。

少し不思議です。


9 会社の中身が「スカスカ」になる

会社そのものは残る。

でも、

人間が大量にいる必要はなくなる。

この可能性はかなりあります。

法人格。 銀行口座。 契約。 ブランド。 知的財産。 顧客。

は残る。

でも、 社員は少ない。

つまり、

会社はなくなるのではなく、 中身がスカスカになる。

そんな未来です。

この表現は、 意外にしっくりきます。


10 法人という「器」はむしろ残るかもしれない

人が減っても、 法人そのものは必要です。

契約する主体。 資産を持つ主体。 税金を払う主体。 責任を負う主体。 知的財産を持つ主体。

として、 法人は便利です。

だから、

会社そのものが消える

というより、

会社の内部構造が変わる

と考えたほうが自然です。


11 1人+AI+外部専門家

未来の典型的な会社の一つとして、

1人の創業者。 複数のAIエージェント。 必要なときだけ外部専門家。

という形が考えられます。

例えば、

日常の調査はAI。 資料作成もAI。 顧客対応もAI。 会計処理もAI。

でも、

法務は弁護士。 税務は税理士。 特殊なデザインはデザイナー。

必要なときだけ人間を使う。

かなり軽い会社です。


12 固定費が減る

人を雇うと、 給与だけではありません。

オフィス。 社会保険。 採用。 教育。 管理。

いろいろ必要です。

AIで一部を代替できるなら、

固定費

がかなり減ります。

会社にとっては大きいです。

売上が少ないうちは、 少人数で運営する。

売上が増えてから人を増やす。

このやり方がさらにしやすくなります。


13 意思決定も速くなる

人が少ない会社は、

意思決定が速い

ことが多いです。

AIが情報整理を手伝えば、 さらに速くなる。

調査。 比較。 資料。 予測。

をAIが出す。

経営者が決める。

これなら、

何段階も承認を取る

必要がありません。

AI時代の会社では、

規模の大きさより、 意思決定速度

が重要になる可能性があります。


14 中間管理が減る可能性

第9章で、

管理職の情報中継機能が減るかもしれない

という話をしました。

これが進むと、

会社の階層そのものが薄くなる

可能性があります。

社員。 管理職。 部長。 役員。

と何段階もある。

でも、 AIが情報を直接整理し、 必要な人に届けるなら、

中間層の一部は不要になるかもしれません。

これは、 会社の形をかなり変えます。


15 組織より「プロジェクト」になるかもしれない

固定的な会社組織ではなく、

必要なときだけ人が集まる

形も増えるかもしれません。

例えば、

新商品を作る。

創業者1人。 AI。 デザイナー1人。 エンジニア2人。 営業1人。

半年で作る。

終わったら解散。

次のプロジェクトでは、 また別の人が集まる。

会社というより、

プロジェクトのネットワーク

です。

AIが調整を手伝えば、 こうした働き方はかなりやりやすくなります。


16 会社の境界が曖昧になる

今でも、

社員。 派遣。 業務委託。 外注。

があります。

そこにAIが入る。

すると、

どこまでが会社なのか

が少しわかりにくくなります。

社員3人。 外部専門家20人。 AIエージェント100個。

これを一つの会社と呼ぶ。

かなり不思議です。

でも、 あり得そうです。


17 信用はどうするのか

会社が少人数になっても、

信用

は必要です。

顧客から見ると、

「この会社に頼んで大丈夫か」

が重要です。

社員100人の会社と、 社員1人の会社。

同じ100億円の売上でも、 印象は違うかもしれません。

特に、

長期保証。 大規模案件。 安全責任。

では、 組織の厚みが信用になることがあります。

だから、

人が少なければよい

とは限りません。


18 責任は誰が取るのか

AIが営業する。 AIが見積もる。 AIが説明する。

でも、 AIが間違えた。

誰が責任を取るのでしょうか。

結局、

会社

です。

さらに少人数会社なら、

経営者本人

に責任が集中する可能性があります。

会社が軽くなるほど、 責任まで軽くなるわけではありません。

ここは重要です。


19 人材育成の場が減るかもしれない

少人数会社が増えると、 少し困る問題があります。

新人はどこで育つのでしょうか。

これまで会社は、

仕事をする場所

であると同時に、

仕事を覚える場所

でもありました。

先輩を見る。 失敗する。 教えてもらう。 簡単な仕事から始める。

こうして経験を積みます。

AIが簡単な仕事を全部やると、

新人が最初にやる仕事

が減る可能性があります。

これはかなり大きな問題です。


20 「下積み」が消えるとどうなるのか

例えば、

若手が議事録を取る。

昔は、 少し地味な仕事でした。

でも、 会議内容を聞き、 何が重要かを学ぶ機会でもありました。

AIが全部議事録を作ると、

仕事は楽になります。

でも、

学習機会も消える。

同じことが、

資料作成。 調査。 メール。 簡単なプログラム。

でも起きるかもしれません。

効率化と育成。

ここには少し緊張関係があります。


21 AIが新人教育までやるのか

一方で、 AIそのものが教育役になる可能性もあります。

仕事を説明する。 添削する。 質問に答える。 練習問題を出す。

これなら、

先輩がいなくても学べる

可能性があります。

つまり、

会社で先輩から学ぶ

代わりに、

AIから学ぶ。

この形が本当に成立するのか。

まだよくわかりません。


22 孤独な会社が増えるかもしれない

1人会社は自由です。

でも、 孤独です。

相談相手。 同僚。 雑談。 チーム。

がありません。

AIは話し相手にはなります。

でも、 人間の同僚とは違います。

少人数化が進むと、

経営効率は上がる。 でも、仕事の社会性は下がる。

可能性があります。

ここも少し考える必要があります。


23 会社は「共同体」でもある

会社は、 単なる生産装置ではありません。

人間関係。 所属意識。 学習。 文化。

があります。

AIで効率だけ追うと、

会社の共同体としての機能

が弱くなるかもしれません。

これが良いのか悪いのか。

人によります。

一人で働きたい人には良い。

チームで働きたい人には、 少し寂しいかもしれません。


24 会社が小さくなると、利益は誰に集まるのか

ここから、 第11章につながる話です。

100人必要だった会社が、 10人で同じ売上を作れる。

生産性は上がります。

では、 残り90人分の利益は誰に行くのでしょうか。

顧客への値下げ。 社員の給与。 経営者の利益。 株主。 AIサービス会社。

いろいろあります。

ここは、 経済全体ではかなり重要です。


25 会社が小さくなれば、社会全体が豊かになるのか

会社が少人数で高い売上を作る。

一見、 とても効率的です。

でも、

働く場所が減る。

所得が一部に集中する。

となると、 社会全体では別の問題が出ます。

企業の生産性が上がることと、

社会全体が豊かになること

は同じではありません。

この話は、 次の章で少し詳しく考えます。


26 それでも会社はなくならないと思う

ここまで、

会社が小さくなる。 階層が減る。 AIが仕事をする。

という話をしてきました。

でも、 私は会社そのものはなくならないと思います。

理由は、

信用。 責任。 契約。 資産。 ブランド。

が必要だからです。

人間が少なくなっても、 これらをまとめる器は必要です。

だから、

会社が消える

というより、

会社の中身が変わる。

そのほうがありそうです。


27 「社員数」が会社の価値ではなくなる

これまで、

社員1000人

と言うと、 大きな会社に感じます。

でも将来、

社員20人。 売上1000億円。

の会社が増えれば、

社員数

は会社の大きさを示さなくなるかもしれません。

むしろ、

一人あたり売上。 一人あたり利益。 AI活用能力。

のほうが重要になる。

これは、 会社を見る感覚そのものを変えるかもしれません。


28 AIエージェント数を数える時代が来るのか

少し冗談のような話です。

「御社は社員何人ですか」

ではなく、

「人間は何人で、 AIエージェントは何体ですか」

と聞く時代。

来るのでしょうか。

今は少し変です。

でも、 10年後には普通かもしれません。

あるいは、 全然そんな数え方はしないかもしれません。

このへんは、 本当にまだわかりません。


29 100人会社並みに動く1人会社は、たぶん出る

かなり乱暴ですが、

1人+AIで、 現在の100人会社並みの一部機能を持つ会社

は出ると思います。

ただし、

何でも100人分

ではありません。

知的作業。 情報処理。 コンテンツ制作。 ソフトウェア。 営業支援。

のような分野です。

工場。 建設。 介護。 物流。

のように、 物理的な人手が必要な仕事では、 事情が違います。

つまり、

会社の小型化は、 業種によってかなり差が出る

はずです。


30 会社は「人の集団」ではなくなるのか

最後に、 かなり根本的な問いです。

会社とは、

人が集まって働く場所

なのでしょうか。

それとも、

価値を生み、 契約し、 責任を持つ仕組み

なのでしょうか。

もし後者なら、

人が少なくても会社は成立します。

AIが増えても、 会社は会社です。

すると、

会社というものを、 人の集団として見る考え方

が少しずつ変わるかもしれません。


まとめ 会社はなくならない。でも、中身はかなり変わるかもしれない

AIが進むと、

調査。 資料作成。 営業支援。 顧客対応。 進捗管理。 会計補助。

など、 会社内部の多くの仕事が軽くなる可能性があります。

その結果、

少人数で大きな仕事をする会社

が増えるかもしれません。

1人+AI+外部専門家。

そんな会社も、 かなり現実的になります。

一方で、

信用。 責任。 人材育成。 共同体。 雇用。

といった問題は残ります。

だから、

会社そのものが消える

とは思いません。

でも、

人を大量に抱えることが、 会社の前提ではなくなる。

そんな可能性はあります。

そして、 もし本当に少人数で大きな売上を作れるようになったら、

次の問題が出ます。

そこで生まれた利益は、 どこへ行くのでしょうか。

AIは本当に、 社会全体の富を増やすのでしょうか。

それとも、

一部の企業や資産の値段を さらに押し上げるだけなのでしょうか。

次の章では、 少し経済学の話をしてみます。