21世紀の郵便制度
郵便制度は19世紀だ。いまは21世紀だぞ。目を覚ませ。
もう切手を買いに行きたくない。
というか、なぜ2026年にもなって「切手を買いに行く」という行為が存在しているのか。
郵便局かコンビニに行く。
110円切手を買う。
家に戻る。
封筒に貼る。
宛先を手で書く。
料金が足りているか心配する。
ポストまで持っていく。
何をやっているんだ。
19世紀か。
いや、郵便制度そのものが悪いと言っているわけではない。
日本全国へ、たった100円少々で物理的な紙を届ける。
これはものすごいインフラである。
配達網も、郵便番号も、区分機も、ポストも素晴らしい。
問題は入口だ。
入口だけが19世紀なのである。
いまは21世紀だぞ。目を覚ませ。
Apple Payで払わせろ
まず切手をやめよう。
正確には、「料金分の価値を持つ小さな紙片を事前に買っておく」という仕組みをやめよう。
私は110円切手が欲しいわけではない。
手紙を1通送りたいだけである。
ここを間違えてはいけない。
利用者の目的は切手の購入ではない。
郵便物の発送だ。
Amazonで商品を買うとき、事前に「送料券」を買わない。
電車に乗るときも、いまどき毎回事前に紙の切符を買わない。
店でも現金を財布から出さずにApple Payで払う。
なのに郵便になると突然、
「まず110円という価値を紙に変換してください」
となる。
なぜだ。
Apple Payで払わせろ。
以上である。
しかし、ここで「アプリで決済してQRコードを発行します。ご自宅のプリンタで印刷してください」と言い出したら失格である。
プリンタを使わせるな。
私は切手を買いに行きたくないのであって、プリンタドライバと戦いたいわけではない。
そこで、最初から一意なQRコードが印刷されたシールを100枚くらい配っておけばいい。
このシール自体には価値がない。
ただの番号札である。
手紙を出すときにアプリで読む。
Apple Payで110円払う。
その瞬間、
「このQRコードは110円支払済み」
と日本郵便のサーバに登録される。
ただのシールが、その瞬間だけ切手になる。
これでよい。
切手を買い置きする必要すらない。
「84円切手が余った」 「値上げしたから追加で26円貼る」 「この切手まだ使えるんだっけ」
全部いらない。
料金を払ったかどうかはサーバが知っていればいい。
紙に金額を印刷する必要などない。
宛先も書かせるな
次。
住所。
これもおかしい。
なぜ毎回、封筒に住所を書かなければならないのか。
「鳥取県鳥取市……」
「東京都文京区……」
何十文字も人間が転記する。
一文字間違えたら届かない可能性がある。
21世紀に人間をコピー機として使うな。
必要なのは住所文字列ではない。
「この郵便物を誰に届けるか」
という情報である。
ならばアプリで相手を選べばいい。
「田中先生」
を選ぶ。
Apple Payで払う。
QRシールを読む。
終わり。
そのQRコードに、
料金支払済み 宛先:田中先生 配送先:登録住所 差出人:岩田
を紐付ける。
郵便局の区分機がQRコードを読めばいい。
現行制度上、封筒表面に住所表示が必要なら、最初の集配局で自動的にラベルを印刷して貼ればいい。
利用者に書かせる必要はない。
ここが重要である。
「制度上、住所を書く必要があります」
ではない。
「誰が書く必要があるのか」
を考えろ。
機械が書けばいい。
さらに制度を変えれば、住所ラベル自体もいらない。
QRコードだけで最後まで届ければよい。
人間が読む住所は、配送の本質ではない。
配送システムが宛先を特定できればいい。
住所を知らなくても送れるようにしろ
ここまでやると、さらに重要なことができる。
相手の住所を知らなくても郵便物を送れる。
これはかなり大きい。
「田中先生」というIDだけ知っていればいい。
住所は日本郵便側が知っている。
田中先生が引っ越したら、田中先生が自分の登録住所を変更する。
送り手は何もしなくていい。
住所変更ハガキもいらない。
年賀状リストを書き換える必要もない。
取引相手に自宅住所を教える必要もない。
住所というものを、公開情報ではなく内部情報にできる。
これはフリマ、同人活動、小規模通販、ファンレター、個人間取引などで非常に大きい。
物は送りたい。
でも住所は見せたくない。
そんな需要はいくらでもある。
郵便がIDベースになれば解決できる。
というか、なぜまだやっていない。
料金表も読ませるな
さらに言う。
郵便料金を利用者に計算させるな。
定形。
定形外。
50g。
100g。
厚さ。
サイズ。
知らん。
私は郵便局員ではない。
手紙を送りたいだけだ。
郵便物をカメラで撮影して、サイズを判定すればいい。
必要なら、
「紙は何枚入っていますか」
くらい聞けばいい。
それでも面倒なら新しい料金体系を作れ。
例えば、
Digital Letter 全国一律150円 50gまで
これでいい。
多少高くてもいい。
10円、20円安くするために、人間に料金表を調べさせ、重量を測らせ、切手を買わせる方が高くつく。
郵便料金より私の時給の方が高い。
これは冗談ではない。
現代のサービス設計では、人間の時間もコストである。
「最安」だけが価値ではない。
「何も考えなくていい」ことにも価値がある。
だから売るべき商品は、
安い郵便
ではない。
30秒郵便
である。
理想はこれだけ
封筒に手紙を入れる。
iPhoneを開く。
「田中先生に送る」
Apple Pay。
QRシールを1枚読む。
封筒に貼る。
ポストに入れる。
終わり。
30秒。
これでいい。
もっと言えば、
「田中先生にこれ送って」
とSiriに言う。
Face ID。
Apple Pay。
シールを読む。
終わり。
そのくらいでいい。
郵便をAPI化しろ
ここまで考えると、これは「電子切手」の話ではない。
郵便そのものをAPI化する話である。
料金。
住所。
転居。
追跡。
本人確認。
配送。
これらを全部サーバ側に持たせる。
封筒は単なる物理ペイロードである。
インターネットでは、人間が毎回IPアドレスを入力しない。
DNSがある。
電話では、電話番号を暗記しない。
名前を押す。
決済では、現金を数えない。
Apple Payで終わる。
なのに郵便だけ、
住所を手で書け。
料金を調べろ。
切手を買え。
糊で貼れ。
と言っている。
19世紀だ。
いまは21世紀だぞ。
目を覚ませ。
必要なのは全国の郵便網を作り直すことではない。
配達員をロボットにすることでもない。
ドローンで運ぶことでもない。
そんな大げさな話ではない。
ポストもそのままでいい。
郵便局もそのままでいい。
配達員もそのままでいい。
変えるべきなのは、利用者が郵便物を出すまでの最初の30秒だけだ。
切手を買わない。
料金を調べない。
住所を書かない。
相手を選ぶ。
払う。
貼る。
投函する。
それだけだ。
日本郵便よ。
まずそこから21世紀に来てくれ。