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第7章 AIで儲かる会社、儲からない会社

生成AIを使えば儲かる。

そんな話をよく聞きます。

たしかに、うまく使えば仕事は速くなります。

資料作成。 調査。 メール。 翻訳。 問い合わせ対応。 プログラム作成。

いろいろなところで時間を短縮できます。

では、AIを使えば会社の利益は増えるのでしょうか。

ここは少し難しいところです。

仕事が速くなっても、 売上が増えるとは限りません。

コストが下がっても、 競合も同じように下がるかもしれません。

AIで商品を作れても、 誰も買わなければ意味がありません。

つまり、

AIを使えること

AIで儲かること

は別です。

この章では、

同じようなAIを使っているのに、 なぜ成果が出る会社と出ない会社があるのか

を考えてみます。


1 AIを入れただけでは儲からない

これは最初に言ってしまいます。

AIを入れただけでは儲かりません。

少し当たり前です。

例えば、最新の生成AIを全社員に使えるようにした。

便利です。

でも、

顧客が増えたのか。 売上が増えたのか。 原価が下がったのか。 納期が短くなったのか。 ミスが減ったのか。

ここにつながらなければ、 経営上の効果は限定的です。

AI導入が目的になると、

「全社員が使えるようになりました」

で満足してしまう。

しかし経営者から見れば、

「それで何が変わったのですか」

が重要です。


2 利益は、売上とコストで決まる

会社の利益は、かなり単純に言えば、

売上 − コスト

です。

AIで儲ける方法も、 結局はこのどちらかです。

売上を増やす。

あるいは、

コストを減らす。

例えば、

営業資料を速く作る。 問い合わせ対応を速くする。 見積もり作成を短縮する。

これは主にコスト削減です。

一方で、

顧客ごとに提案を変える。 海外顧客に対応する。 新商品を早く出す。 24時間問い合わせを受ける。

こうした使い方は、 売上増加につながる可能性があります。

AI導入の話をするとき、

「この施策は売上側なのか、コスト側なのか」

を分けて考えると整理しやすいです。


3 コスト削減だけでは限界がある

AI導入で一番わかりやすいのはコスト削減です。

10時間かかっていた仕事が5時間になる。

これは測りやすいです。

しかし、

コスト削減だけでは限界があります。

100万円の仕事を50万円にはできても、 売上を1000万円に増やすことはできません。

だから大きく成長する会社は、

AIで安くする

だけでなく、

AIで新しく売る

ところまで行く必要があります。

ここが一つの分かれ目です。


4 AIで売上を増やすとはどういうことか

例えば営業で考えます。

AIで営業メールを速く作る。

これは効率化です。

しかし、

顧客ごとに内容を変える。 過去の商談履歴を整理する。 提案の切り口を複数作る。 海外向けに翻訳する。

ところまでやると、

営業の質

が変わります。

結果として、

提案件数が増える。 成約率が上がる。 海外顧客が増える。

可能性があります。

この段階になると、 AIは単なる作業効率化ではなく、

売上を作る道具

になります。


5 AIで「今までできなかったこと」ができる会社は強い

AI導入で本当に大きな効果が出るのは、

今まで高すぎてできなかったこと

ができるようになる場合です。

例えば、

顧客100社ごとに提案書を変える。

以前なら人手が足りない。

でもAIならできる。

毎日100件の問い合わせを分類する。

以前なら専任担当が必要。

でもAIならできる。

海外向けの商品説明を10言語で作る。

以前なら高コスト。

でもAIならできる。

つまり、

AIによって新しい仕事が可能になる。

ここまで行くと、 利益への影響は大きくなります。


6 AIで儲かる会社は「仕事の設計」がうまい

同じAIを使っていても、 成果に差が出ます。

その差の一つは、

仕事の設計

です。

例えば、

社員が自由にAIを使ってください。

だけでは、 成果はばらばらです。

一方で、

この問い合わせはAIで下書き。 この資料はAIで要約。 この部分は人間が確認。 このデータは入れない。

と仕事の流れを決める。

すると安定します。

AIの性能より、

AIをどこに入れるか

のほうが重要になることがあります。


7 データを持っている会社は強い

AIそのものは、 多くの会社が同じものを使えます。

ChatGPT。 Gemini。 Claude。 その他のサービス。

競合も使えます。

では、差はどこに出るのでしょうか。

一つは、

自社データ

です。

顧客履歴。 販売履歴。 問い合わせ履歴。 商品情報。 過去の提案。 現場ノウハウ。

これを持っていて、 整理して使える会社は強いです。

AIモデルは買えます。

でも、

10年分の自社データ

は簡単には買えません。


8 会社の知識が蓄積されているか

ベテラン社員の頭の中にしかノウハウがない。

これは、多くの会社にあります。

AIを使うには、

知識を外に出す

必要があります。

マニュアル。 FAQ。 作業記録。 過去事例。

こうしたものを整理する。

これができる会社は、 AIを使いやすいです。

逆に、

口伝。 暗黙知。 個人メモ。

ばかりの会社では、 AIを入れても使える情報がありません。

AI時代には、

会社の知識を記録する能力

そのものが競争力になるかもしれません。


9 意思決定が速い会社は強い

AIで情報を集める。

分析する。

提案を作る。

ここまで速くなっても、

最後の決定に1か月かかる

なら意味がありません。

AI導入では、

意思決定速度

がかなり重要です。

例えば、

AIで市場調査を1日で出せる。

でも、

会議日程調整に2週間。

これでは遅い。

AIで速くなった部分に合わせて、 会社の意思決定も速くする。

ここまでできる会社は強いです。


10 小さい会社は意外に有利

AI時代は、 中小企業に不利だと思うかもしれません。

大企業は資金があります。 専門家もいます。 データもあります。

たしかに強いです。

しかし、

中小企業には意思決定の速さがあります。

社長が、

「やってみよう」

と言えば、 翌日から試せることがあります。

大企業では、

予算申請。 法務確認。 情報システム部門。 セキュリティ審査。 稟議。

が必要です。

生成AIのように変化が速い技術では、

小さく試せる会社

はかなり有利です。


11 AIを使う社員が評価される会社か

会社の制度も影響します。

例えば、

AIを使って仕事を2時間短縮した。

その結果、

「じゃあ追加で仕事を2時間分やって」

だけなら、 社員は工夫しなくなるかもしれません。

一方で、

改善を評価する。 成功事例を共有する。 試す時間を与える。

会社なら、 AI活用が広がります。

AI導入は、 ツールの問題だけではありません。

評価制度の問題でもあります。


12 「失敗していい」会社は強い

生成AIは、 使い方がまだ固まっていません。

つまり、

試して失敗する

ことが必要です。

ここで、

失敗したら怒られる。

となると、 誰も新しい使い方を試しません。

例えば、

10個の業務でAIを試す。 7個は微妙。 2個は少し便利。 1個は大当たり。

これで十分です。

AI活用は、 最初から全部当てるゲームではありません。

たくさん試して、 当たりを残す。

この姿勢が重要です。


13 AIで儲からない会社は「AIを使うこと」を目標にしている

少し厳しく言うと、

AI利用率80%

だけでは意味がありません。

全社員が毎日AIを使っている。

すごそうです。

でも、

売上は変わらない。 残業も変わらない。 ミスも減らない。

なら、 経営上の成果はありません。

KPIは、

利用者数

ではなく、

業務成果

を見るべきです。

例えば、

問い合わせ対応時間。 提案数。 成約率。 納期。 作業時間。 ミス率。

こうした数字です。


14 AIを使うほど差別化が難しくなることもある

ここは少し面白い問題です。

生成AIを誰でも使えるようになると、

みんな同じようなものを作れる

ようになります。

メール。 広告文。 商品説明。 画像。

全部きれいになる。

すると、

平均点は上がる。

でも、

差はつきにくくなる。

これはかなりあり得ます。

AIで品質を上げるだけでは、 競争優位にならない。

むしろ、

何を作るか。 誰に売るか。 どんな体験を作るか。

のほうが重要になります。


15 AI時代は「普通」が安くなる

文章を作る。

簡単な画像を作る。

翻訳する。

調査する。

これまで人手が必要だった仕事が、 どんどん安くなります。

すると、

普通の成果物

の価値が下がる可能性があります。

例えば、

普通の会社紹介文。

普通の広告画像。

普通の提案書。

誰でも作れる。

こうなると、

独自性。 信頼。 関係性。 ブランド。

の価値が相対的に上がります。

AIで作れるものが増えるほど、

AIでは作りにくいもの

が重要になる。

少し逆説的です。


16 顧客を理解している会社は強い

AIが文章を作ってくれても、

顧客が何を欲しいか

は自動ではわかりません。

顧客の悩み。 予算。 社内事情。 決裁者。 タイミング。

こうした情報を持っている会社は強いです。

AIは、

顧客理解を代替する

というより、

顧客理解を活用する

道具です。

自社の顧客をよく知っている会社ほど、 AIを使った提案の質も上がります。


17 AIで儲かる会社は、AIを前面に出さないこともある

面白いことに、

AIで儲かる会社が、

「AI企業」

を名乗る必要はありません。

顧客が欲しいのは、

AI

ではなく、

早い納期。 安い価格。 良いサービス。 便利な商品。

です。

裏でAIを使っていても、 顧客から見えなくてよい。

例えば、

見積もりが翌日ではなく10分で出る。

顧客にとっては、 それが価値です。

「AIで作りました」

は、どうでもいいかもしれません。


18 AI導入で価格を下げるか、利益を増やすか

AIでコストが下がったとします。

その分、

価格を下げる。

という選択があります。

競争力が上がります。

一方で、

価格はそのまま。 利益率を上げる。

という選択もあります。

さらに、

浮いた資金を新商品開発に使う。

こともできます。

AIの効果を、

全部値下げに使う

必要はありません。

どこに配分するかは経営判断です。

ここで会社ごとの差が出ます。


19 AIで生まれた余力を何に使うか

AIで一人あたり月10時間浮いた。

社員20人なら、 月200時間です。

大きいです。

では、 その200時間を何に使うのでしょうか。

顧客訪問。 新商品。 教育。 営業。 改善。

ここに使えば、 次の売上につながるかもしれません。

一方で、

追加の会議。 追加の資料。 追加の報告。

に使えば、 ほとんど変わりません。

AIの利益は、

浮いた時間そのもの

ではなく、

浮いた時間を何に再投資するか

で決まります。


20 AIで利益が出たら、さらにAIに投資する

成果が出た会社は、 次の投資ができます。

AIで月50万円の効果が出た。

そのうち10万円を、 次のAI活用に使う。

これを繰り返す。

すると、

AI導入 ↓ 利益 ↓ 再投資 ↓ さらに改善

という循環ができます。

これは強いです。

一度きりの導入ではなく、

改善が自己増殖する

状態です。


21 AI活用にも複利があるかもしれない

ここから少し難しい話です。

AI導入の効果は、 単純な足し算ではないかもしれません。

例えば、

社員がAIを使う。 ↓ 使い方がうまくなる。 ↓ 社内ノウハウが増える。 ↓ データが整理される。 ↓ さらにAIが使いやすくなる。 ↓ また成果が出る。

という循環があります。

つまり、

AI利用経験

そのものが資産になります。

早く始めた会社は、 単に1年早く使っただけではなく、

1年分の学習

を持っている。

この差は、 あとから効いてくる可能性があります。


22 でも、AIだけでは競争優位は続かない

ここは冷静に考えたほうがよいです。

今は、

AIを使える

だけで差がつくことがあります。

でも、 数年後には普通になるかもしれません。

メールを書く。 翻訳する。 要約する。

誰でもAIを使う。

そうなると、

AI利用そのもの

は差別化ではなくなります。

最終的に残るのは、

顧客。 ブランド。 データ。 ノウハウ。 組織。 信頼。

こうしたものです。

AIはそれを強くする道具です。


23 AI時代に強い会社は「学習する会社」

生成AIは、 半年でかなり変わります。

今日の正解が、 来年も正解とは限りません。

だから、

一度導入して終わり

ではダメです。

試す。 測る。 やめる。 変える。

この繰り返しが必要です。

つまり、

AI時代に強い会社

というより、

学習する会社

が強い。

私はそう思います。


24 儲からなくても意味があるAI利用もある

ここまで、

AIで儲かるか

という話をしてきました。

でも、 すべてを直接利益で測る必要はありません。

社員の負担が減る。 採用しやすくなる。 ミスが減る。 顧客対応が速くなる。

こうした効果も重要です。

例えば、

残業が減って退職者が減る。

これは大きな価値です。

直接売上には見えなくても、 会社にとっては意味があります。


25 経営者が見るべき5つの数字

AI導入後に、 何を見ればよいのか。

私は、最初はこの5つくらいでよいと思います。

  1. 時間は減ったか
  2. 売上は増えたか
  3. ミスは減ったか
  4. 顧客対応は速くなったか
  5. 社員の負担は減ったか

全部改善する必要はありません。

どれか一つでも、 大きく良くなれば意味があります。

逆に、

どれも変わらない

なら、 AIの使い方を見直したほうがよいです。


26 AI導入で最も重要なのは「再設計」

AIで儲かる会社は、

既存業務にAIを足す

だけではありません。

仕事のやり方を変えます。

例えば、

毎週報告書を書く ↓ AIで自動生成 ↓ 管理職が確認

ではなく、

そもそも必要な指標だけリアルタイムで見る

ようにする。

AIを使って、 仕事そのものを再設計する。

ここまで行くと、 効果は大きくなります。


27 「AIを使う会社」と「AIで変わる会社」

最後に、 少し大きく整理してみます。

AIを使う会社。

メールが速い。 要約が速い。 資料が速い。

便利です。

でも、

AIで変わる会社

はもう一段違います。

仕事の流れが変わる。 意思決定が速くなる。 顧客対応が変わる。 商品開発が変わる。 組織の役割が変わる。

ここまで行く。

AI導入の本当の差は、 たぶんここに出ます。


まとめ AIそのものではなく、会社の使い方が差になる

同じ生成AIを使っても、 会社によって成果は違います。

データがある。 知識が整理されている。 意思決定が速い。 社員が試せる。 失敗から学べる。 余った時間を次に投資する。

こうした会社は強いです。

逆に、

AIを入れただけ。 利用率だけ測る。 仕事の流れはそのまま。 意思決定もそのまま。

では、 大きな成果は出にくいです。

AIは、 会社を自動的に儲かる会社にしてくれる道具ではありません。

AIは、

良い会社を、もっと強くする道具

なのかもしれません。

そして少し意地悪に言えば、

悪い仕事の仕方を、 もっと速くする道具

にもなります。

だから、

AIの性能

だけを見るのではなく、

自分の会社が、 AIを使って変われる会社なのか

を見る必要があります。

次の章では、 少し視点を人間側に移します。

AIを使うと、 社員は本当に賢くなるのでしょうか。

それとも、 考えなくなってしまうのでしょうか。